2016年4月7日木曜日

Return to Forever


永遠への回帰・・・と、まぁ、直訳すればそうなるんですが、チック・コリアが発表したジャズ・アルバムのタイトルです。ちょっとジャズをかじった方なら知らないはずがないくらい超有名盤で、ジャズ史上にも確実にはずすことができないもの。

1972年、当時のコリアは、マイルス・デイビスのバンドに在籍し、マイルスの音楽はロック・ファンク色を強くし、より混沌の世界に突入していたころです。

ところが、コリアはこのソロ・アルバムで、マイルスの元でやっていた演奏とは真逆の世界を描き出しました。非常に音楽的で、メロディの美しさ、リズムの乗りの良さが強調されたのです。

ラテン・フレーバーをまったく新しい感覚で取り込んだ音楽は、一部に従来のジャズ・フォーマットを残しつつも、チック・コリアの独自の世界を完成させていました。

コリアのそれ以前のアルバムには、明らかにコリア・フレーバーの発芽が見られるものがありますが、このアルバムで結実することができた最大のポイントは電子ピアノでしょう。

全編にわたって、フェンダー・ローズ(当時はフェンダー・ローデスと呼んでいた、音叉を叩いてピックアップで拾う電気ピアノ)を用いたことによるファンタジー感が見事で、ローズを使用した最も成功したアルバムであり、多方面に大きな影響を与えたことは間違いありません。

当時、新興レーベルだったECMのセンスのよいレコード作りも見事で、大変インパクトがありました。ジャケットのスピード感があるカモメのイメージは、まさにこのアルバムから出てくる音楽を的確に表していたと思います。

例えば好きなジャズのアルバムを5枚選べといわれたら、すべてマイルス・デイビスだけで埋まってしまうと思いますが、10枚まで選んでよいならこのアルバムは確実にその中に入ります。