2014年2月20日木曜日

J.E.Gardiner / Mozart Requiem

なにしろキリスト教徒でないもので、クラシック音楽、とくに声楽関係の曲についてはなかなか理解がしにくい。

おそらく基本的な言葉としては「ミサ」というものがあって、これはカトリック教会で行われる最も重要で基本的な典礼儀式とされます。イエスの最後の晩餐を模して、その復活を願い、そして感謝を捧げるために祈るものと理解してよいと思います。

その際に使われる楽曲がミサ曲であり、キリエ(求憐誦)、グローリア(栄光頌)、クレド(信経)、サンクトゥス(三聖頌)、アニュス・デイ(神羔頌)と呼ばれる5つの通常文が必ず含まれます。クレドが含まれない場合は「小ミサ曲」と呼ばれます。

ですから、 古来幾多のミサ曲が作られていますが、基本的な「曲名」は一緒であり、歌われる歌詞も同じものになるわけです。

あとは演奏される目的などによって、固有文が適宜挿入される構成をとります。固有文には、イントロイトゥス(入祭唱)、グラドゥアーレ(昇階唱)、セクエンツィア(アレルヤ唱)、オッフェルトリウム(奉献唱)、コンムニオ(聖体拝領誦)などがあり、テキストは状況によって多少の違いがあるそうです。

クラシック音楽では、レクイエムと呼ばれる楽曲もかなりあるのですが、これは死者の安息のための特殊なミサ曲であり、グローリアとクレドは含まれません。 最も有名なのが、モーツァルト、ヴェルディ、フォーレによるもの。他にはベルリオーズ、ブラームス、ブルックナー、ドヴォルザーク、サンサーンス、リスト、シューベルト・・・などなど。

しかし、やはり一番知られているものといえばモーツァルトであることに異論はないでしょう。映画「アマデウス」でも象徴的に使われ、「自らの死の床で書いた未完の作品」というイメージが人気に拍車をかけているのです。

未完であるために、弟子のジュースマイヤーにより補筆完成した版が基本とされますが、細かく分けると全部で14曲あるうちの、モーツァルトが完成させたのは第1曲のみ。

第2~10曲については、ジュースマイヤーの手が入っていて、第11~13曲はモーツァルトの何らかの指示のもとにジュースマイヤーが作曲。最終曲は、冒頭を部分をモーツァルトの指示により繰り返し使用しています。

そのため、いろいろな研究により、あーだこーだと曲を削ったり追加したりした様々な版が数多く存在し、演奏者もいろいろな版をいいとこどりに使用したりするため、大変混乱した状態になっていることは否めません。

J.F.ケネディの追悼ミサで演奏されたことも有名ですが、名演とされるものは幾多あります。ベームとウィーンフィル、カラヤンとベルリンフィルが、大編成モダンオーケストラの演奏としては双璧をなすものとされています。

YouTubeでも動画でたくさん見ることができます。ショルティのものは、司祭による実際の典礼も含まれ、教会におけるレクイエムの実際の進行がわかり貴重な映像でしょう。

最近ではアバドによるものが素晴らしく、終わった後の指揮棒を降ろせないアバドの約45秒間の沈黙のあとの割れんばかりの拍手は感動的です。個人的にはザビーネ・マイヤーがバセットホルンで参加しているのも嬉しいところ。

さて、ここでもジョン・エリオット・ガーディナーのお世話になりたいと思います。ガーディナーは手兵のEnglish Baloque SoloistsとMonteverdi Choirを指揮して、カラヤンやベームと比べて驚くほど少ない人数での演奏にもかかわらず、濃密な音楽空間を作り出しています。

コンパクトな編成は楽器の分離がわかりやすく、それぞれのパートの動きが伝わりやすい。 またピリオド奏法の特徴である早目のスピードのため、きびきびした展開が飽きさせません。若かりしA.S.オッターのメゾ・ソプラノも楽しい。

自分のように声楽が苦手な方には、突破口として是非お勧めしたい一枚です。