2013年12月23日月曜日

21世紀のリウマチ診療 これまでとこれから

リウマチ診療では、今年は生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬剤が登場してから丸10年という節目の年でした。

メソレトキサートという内服薬から始まる21世紀の新しいリウマチ診療が、生物学的製剤の登場により、急速に進歩してほぼ治癒したような状態が得られるようになったことは、すでにこのブログでも何度も紹介してきました。

最初の数年間は、まったく新しいタイプの薬を使いこなすことに費やされ、その劇的な効果に驚きつつも、未知の副作用に対する恐れも同時に感じながら手探りの状態だったと言えるでしょう。

その後、いろいろな製薬会社からも次から次へと同傾向の薬品が登場し、どのように使えばいいかというノウハウが蓄積しました。いずれを使っても、ほぼ同じ程度の効果が得られ、そして同じ程度の副作用が生じている。

より早期からの使用により、寛解と呼ばれる「再発の可能性を持った治癒に近い状態」が得られる患者さんが増えることもわかりました。それと同時に、世界の学会では「リウマチを止める時代から治す時代」へと目標がシフトしたわけです。

次の数年間は、じゃあどうしたら寛解に持っていけるのか、そしてどういう状態なら寛解と言えるのかという点に臨床家の注目が変わっていきました。寛解の定義なども決まってきましたが、リウマチで難しいところは、客観的な評価がなかなかしにくいという点です。

検査値や外見的な間接の腫れなどはわかりやすいのですが、主症状の痛みというものはあくまで主観的なものであり、正確に評価することは困難です。今なお寛解を判断する基準については、議論の余地があり、いくつもの評価基準が同時に使われているという状況です。

そして、数年前に、より早期からの治療介入が重要視されるようになって、診断についてもより検討されるようになりました。早ければ早いほど、診断は難しく、誤診も増える可能性が高まります。

血液検査での、MMP-3や抗CCP抗体の導入は、より診断の助けになるものとして効果的です。また、超音波やMRIといった画像検査の導入も、早期の関節の変化を捉えるのに有益なものとして認知されました。

そして、誰もが納得する診断の基準が20数年ぶりに見直されたのです。過去の基準は、数ヶ月以上だって見た目にわかるような状態にならないと、確定ができませんでした。それでは、治療を開始するタイミングが遅れてしまいます。

より早期でも確定診断を可能とし、リウマチと考えられる状態を見過ごすことがないようにすることが目的として大幅な見直しがされました。もちろん、十分とは言えないかもしれませんが、以前の基準よりも、より実効性のあるものに変わったのです。

2013年は、この10数年の激流からすると、比較的穏やかな年だったのかもしれません。主な新しい話題は、化学構造的により進化した従来型の新しい生物学的製剤が発売されたことと、そして新しい薬理作用に基づく内服型の生物学的製剤が登場したことの2点でしょうか。

特に注目されるのは内服薬型の製剤です。今後、実臨床での効果や問題点がはっきりしてくると、次のリウマチ治療のスタンダードになるポテンシャルを秘めている可能性があります。

さて、その次にくるものは? 2020年までに普及するのは、遺伝子治療の導入ではないかと考えています。ただし、遺伝子そのものを交換するような大胆なことは、倫理的なことも含めて、まだまだ時間がかかることだろうと思います。

実際に、現段階で可能なことは、個人の遺伝子型から最も効果的な - つまり、主作用がしっかり出るか、あるいは副作用が出にくい薬剤を正確に選択することができるようになるということです。現状では、特定の薬剤については研究レベルでの実証が行われています。

そして、同時に期待するのが軟骨の再生技術の確立です。iPS細胞を使った臨床応用の中で可能になってくるかもしれませんが、軟骨を再生することができれば、今ではどうにもできなかった変形した関節を元の状態に戻すことが可能になってくるかもしれません。


その次にくるのが、遺伝子レベルでの直接的な治療でしょう。これができるようになれば、リウマチに限らず、多くの病気を発症を予測して予防的に修正することができるようになるのでしょう。その頃には、生物学製剤も過去の遺物のひとつとして、リウマチ学の歴史になっているんでしょうけどね。