2012年3月15日木曜日

過少診療

過剰の反対は・・・不足。不足診療という言葉は無いですね。過少、または過小診療ならありそうだけど、やっぱり使わない。それに近い言葉だと「萎縮医療」というのがありますね。

萎縮医療というのは、2004年の福島県立病院での出来事が象徴的な出来事として記憶に残っています。もちろん、自分がこの件について口を挟むような立場にはありません。ただ、医療行為の結果が過失致死罪として立件されるというのは医者として衝撃的なことでした。

医療の世界に100%というものは、ほぼ無いと言っていい。最大限の良い結果を残すように医師は努力するものですが、相手がファジーな人間である以上、絶対的な結果という物は約束できるものではありません。

その結果に対して刑事罰が適応されるとしたら・・・残念ながら、医療は萎縮せざるを得ない。ちょっとでも、結果に対して不安を感じたら、一切手を出さないにこしたことはない。

実際、例えば患者さんに針を刺すという場合、そこらの街中でやれば当然傷害事件になってしまいます。しかし、病院内であれば、それは医療行為として正当化されます。これは大きな責任を伴うことであるのは間違いない。

しかし、患者さんが「痛いことはしたくない」と言うならば、針を刺すことのメリットとデメリット、そして針を刺さないことのメリットとデメリットを説明した上で、その医療行為はやらないほうがいい。嫌がっていることをやって患者さんが結果に満足しなければ、不満しか残りません。

ただ、通常はより良い結果が期待できると信じていることを医者はおすすめするわけで、こればかりは信じてもらうしかありません。患者さんのためにできることは何でもするということと、やらなくてもいいことは出来るだけしないということは、絶えず共存しているものです。一定の答えはなかなかでるものではありません。