2012年3月8日木曜日

リウマチ告知

あなたの病名は・・・ガンです。

テレビとかではそんなシーンがよくあったりしますが、実際には医者として致死的なイメージを持った病名を伝えることは、そんなに簡単ではありません。

幸い、整形外科ではその手の病気は少ないのですが、大学で勤務していた頃は、骨肉腫という骨の悪性腫瘍を何人か担当したので、患者さんに、しかも10代のこどもに宣告するという、かなりお互いにストレスの高い状況を経験しました。

今は関節リウマチを専門としていますから、リウマチを心配して受診する患者さんに対して、時に病名を宣告することになることがあります。

関節リウマチ自体は、数百人に一人程度の発症頻度ですが、実際に指の痛みやこわばりで病気を心配して来院する患者さんのうち、関節リウマチである確率はだいたい数十人に一人程度でしょぅか。大多数は、それはそれで嬉しくないでしょぅが、老化的な問題による症状であることが多い。

リウマチセンターの外来では、疑いがあって紹介されてくる患者さんが多く含まれますが、それでも本当にリウマチであるのは十人に一人程度。指が痛いからと言って、そんなにやたらとあるわけではありません。

四半世紀前にアメリカの学会が作った診断のための基準がありますが、これが世界的に広まって、一般の方にもけっこう知られるようになりました。病気の啓発という意味では悪くないのですが、ただその中に「朝のこわばり」という言葉があって、これだけが一人歩きしてしまったみたいなところがあることも否めません。

実際、ポピュラーに指の痛みの原因である腱鞘炎にしても、関節の加齢性変化にしても、朝はこわばり感が出やすい物で、それだけで気にしだしたらきりがない。喉の痛みは「風邪かなぁ」と思うのが普通で、いきなり喉頭癌を心配する人はいません。

数年前に改定された新しい基準では、この朝のこわばりはのぞかれました。そういう意味では、それは良いことだと思います。無駄な心配とまでは言わないにしても、やはり本当に気をつけるポイントを正しく伝えていくことが、早期発見に重要です。

症状や検査結果から関節リウマチと判断した場合には、患者さんに対して病名の告知をするわけです。リウマチというのは不治の病でどんどん関節が壊れて変形していく病気であるというイメージが定着していますから、当然病名を告げられるとそれなりにショックを受けることだろうと想像します。

ただ20世紀に発症したかたと、21世紀になってから発症したかたでは、治療の急速な進歩によって病気の経過には雲泥の差があります。今では、ほぼ「治った」と同じ状態になる患者さんもいるわけですから、とにかくしっかりと病気に対峙して前向きに考えていただけると、医者の側も大変助かります。

医者の仕事は病気そのもののコントロールとともに、そういう気持ちになってもらえるように、いろいろな情報を伝えていくことも重要だということです。